最近の若者は・・・

by manager

「最近の若者」はという言葉を使い始めると年をとったということになるのかもしれないけれど、あえて考えてみることにしました。まずは身近な大学院生から。最近、日本でも大学の大学院化にともない大学院生の数は増えました。そのことはよいことですが、本当に日本のサイエンスの裾野は広がっているのでしょうか。大学院も大学同様大衆化しているのではないかと危惧します。大学院生ともなれば、前向きな態度attitude、passionが重要なことは言うまでもありません。

OBIの名誉所長(現理事長)の早石修先生は、京大の退官講演の中で、研究者にとって大事なことは「運・鈍・根」だと述べられています。確かに研究に限らず、「人生は運や」と思うことは多々あります。今この時、今日一日のやるかやらないか(どちらを選ぶか)の判断の積み重ねが人生です。研究においても、その通りなんですが、その「よい」運を呼ぶためには運に出会う機会をもっていなければなりません。我々は基本的に(というのも最近バイオインフォマテイクスなるベンチで実験しない人種もでてきたので)実験科学をやっている訳ですから、ベンチで実験をしなければ「よい」運にも出会えません。前にも言ったように、研究者とは自分の好きなことを職業にもてる人で幸せです。しかし、職業とするからにはいわゆるプロフェッショナルであるべきで、プロになるためには修業が必要です。大学院生の時代はその最初の専門的トレーニング期間です。よって、大学院の生活とは、一日24時間、一週間7日、一年365日を、ベンチを中心にした生活で送れるかどうかです。寝たり食べたりするのは勿論、時には「外」で遊びたいこともあるかもしれませんが、終わればベンチに戻ってこれるかどうかです。よくアメリカ(米国)との比較をされることがありますが、私の見てきた経験からも米国と日本の大学院の違いは、自分から進んでやるかどうかが大きい違いだと思います。勿論、人により、研究室により異なってきますが、一般論として、日本はどちらかというと徒弟制度的なところがあって、助教授、講師や助手などいわゆる中間管理職スタッフに何から何まで面倒をみてもらって、手取り足取り教えてもらうという感じです。

アメリカはといえば、私がいた研究室にいたのが、ハーバードメディカルスクールのMD-PhDコース或いはMITのPhDコースの学生といったアメリカの中でもいわゆる優秀な学生だったのかもしれませんが、彼らは誰に教えられるでもなく(当然のことながらラボにはポスドクしかいないのでボス以外は面倒を見てくれませんし、ボスは細かいことは何も教えてくれません)、まさに見様見まねで実験をしていました。端から見ていても、最初は明らかに「けったいな」ことをしているのですが、でもそんな中からも自分でともかく考えるというやり方が身に付いているように感じました。よく言われることですが、follow up型の人を育成するには「日本」式が効率よくてっとり早いですが、creative型の人を育てるにはやはり「米国」式も必要かと思います。私としては、自分の研究室では、欲張りですが、日本のいい所とアメリカのいい所の両方を取り入れればと思っています。やる気があり、自分でいろいろとできる人には、私はその成長を邪魔しないスタンスをとるのが一番と思っています。一人でも多くのそんな人がやってきてくれたら楽しいだろうなぁと思う訳です。

次は、大学生の番ですが、大学を離れて3年。大学生と直接接する機会が減ったので、ずーっととばして小学生。最近は、理科離れともよくいいます。或いは、それこそ「最近の若いもん」を含めて小学生までも夢がないともいいます。これらは、やはり、初等教育の問題、大人の問題だと思います。大学の先生は質的に問題があっても学生にさほど影響を及ぼさないですが、小学校の先生は重要です。生徒は先生の良きも悪しきもすべてを吸収していきます。本当のサイエンスを知らない先生には本当のサイエンスの面白さはわからないのではないでしょうか。ゆとり教育と言われて久しいですが、土曜日学校が休みになっても、結局休みが増えただけで学ぶものが多くなったとは思えません。サイエンスに限りませんが、週に一回、月に一回、あるいは年に数回でも、本当にその道のプロから何かを学ぶということが大事なのではないかと感じます。多くの子供にとって、プロ(将来の夢)とは野球やサッカーの選手しか知らないのが現状ですが、それ以外の道にも当然「夢」のある仕事があります。サイエンスに興味のある子供を作るために我々も何かをすべきかと思います。ノーベル賞をもらった偉い先生方だけなく、もっと現役の研究者が真剣に考えることが、ひいて将来のサイエンスのためにもなるのでは。子供の教育は「夢」を与えることです。そうすれば、後は自分で自分の前向き人生を歩んでいきます.

内匠 透